はじめに
現在、世界中で愛されている定番ファッションのジーンズ、パーカー、そしてブーツ。これらをもとをただせば、すべて炭鉱や工場で働く労働者のための「作業着(ワークウェア)」だったことをご存知でしょうか。
かつての彼らが着ていたものは、それこそ現代でいう「ワークマン」で売られている実用性重視の服と大差ないものでした。
そこで一つの面白い疑問が浮かびます。 「もし作業着がファッションになるのなら、現在、日本の現場で愛されている『寅壱(とらいち)』のような作業着ブランドが、未来のシャネルやルイ・ヴィトンのような一流ファッションブランドになったりするのだろうか?」
結論から言えば、その可能性は十分にあります。ただし、それには絶対に必要な「ある条件」が存在するのです。
1. 服をファッションに変えるのは「文化(カルチャー)」の力
ただ頑丈な作業着があるだけでは、それはどこまでいっても「道具」のままです。それをファッションという領域にまで押し上げるのは、まぎれもなく「文化(カルチャー)」の力です。
単に機能性が優れているから流行るのではなく、そこに生きる人々の生き様や物語が盛り込まれることで、服は初めて特別な価値を持ち始めます。
2. 労働者の服を文化に昇華させた「ヒップホップ」とティンバーランド
その最も分かりやすい例が、1970年代以降にアメリカで生まれた「ヒップホップ」のカルチャーです。
当時、ニューヨークの貧困層の労働者たちが着ていたルーズなジーンズや大きめのパーカー、そして足元をタフに守る「ティンバーランド」のイエローブーツは、彼らにとってごく身近な生活着、あるいは労働者の服でした。しかし彼らは、それをただ着るだけでなく、自分たちの「生き様」の象徴として身にまとったのです。
そこにあったのは、格差社会への怒りや政府批判といった、きわめて思想的・政治的なメッセージでした。抑圧された過酷な環境の中で、労働者の服は「反逆のユニフォーム」となり、世界中の若者が憧れる一大ストリートカルチャーへと上り詰めたのです。
3. カルチャーを失った服の末路:なぜドクターマーチンは「ダサい」と言われるのか?
もう一つ、労働者の靴からファッションのアイコンへと上り詰めた有名なブーツがあります。反逆の象徴、パンクカルチャーの代名詞でもあるドクターマーチン(Dr.Martens)です。
これももとは、1960年代のイギリスで郵便配達員や工場の労働者が履く「ただの頑丈な作業靴」でした。それがスカやパンク、グランジといった音楽ムーブメント(反体制の思想)と結びつくことで、世界的なファッションアイコンへと駆け上がった歴史を持っています。
しかし現在、ネットの一部では「マーチンは量産型でダサい」「もう流行遅れ」という声も耳にします。 なぜ、かつてあれほど尖っていたブーツがそう言われてしまうのでしょうか?
理由は明確です。服の背景にある「労働者の誇り」や「反逆の精神(カルチャー)」が忘れ去られ、ただの「みんなが履いているから履く流行の記号」として消費されてしまったからです。思想を失い、ただの見せかけのトレンドに成り下がったとき、ファッションは急激にその輝きを失い、「個性のない量産型」という烙印を押されてしまうのです。
4. 「寅壱」が未来の一流ブランドになる日
そう考えると、ニッカポッカなどで知られる日本の「寅壱」が未来の一流ブランドへと化ける鍵も、この「カルチャーとの融合」にあると言えます。
実はすでに、海外のハイブランドが日本の鳶職(とびしょく)のスタイルに着想を得たコレクションを発表するなど、その独特なシルエットや機能美は世界から注目を集めています。
もし今後、日本の労働者が抱えるリアルな生き様や、現代の社会構造に対するメッセージを体現するような新しい音楽、あるいはアートのムーブメントが「寅壱」と結びついたなら……。それは単なる作業着の枠を飛び越え、世界中が熱狂する「思想を持った一流ファッション」へと進化を遂げるはずです。
おわりに
私たちが何気なく穿いているジーンズの一本一本、足元を支えるブーツの一足一足にも、かつて不条理な社会と戦った労働者たちの思想や文化が刻まれています。服を選ぶということは、実はその服の後ろにある「生き様」を選ぶことでもあるのです。
現代の過酷な労働環境の中で、ただ「流行っているから」「着られればいいから」という理由で服を選ぶのはもうやめませんか?
見せかけのトレンドに流されず、自分の意思や思想を表現するカルチャーとしてのファッションを、今こそ自分の足元から楽しんでみてください。
現代の「カルチャーとしてのワークブーツ」を選ぶ
歴史あるワークウェアの系譜を受け継ぎながら、独自の思想を体現し続けている不朽の定番ブーツをご紹介します。流行としてではなく、貴女自身の「生き様」として選ぶ一足です。
①【キング・オブ・ワークブーツ】Timberland(ティンバーランド)6インチ プレミアムブーツ
ヒップホップカルチャーのアイコンであり、もとは過酷な環境で働く労働者の足元を守るために作られた完全防水ブーツ。時代や流行がどう移り変わろうとも、そのタフな機能美とストリートの精神は今も色褪せることはありません
メンズ
ウィメンズ
②【反逆の原点】Dr.Martens 1460 8ホールブーツ
1960年4月1日に生まれた、ドクターマーチンのファーストモデル。労働者の足元からパンクシーンへと渡った、カルチャーの生きた歴史そのものです。「みんなが履いているから」ではなく、不条理な社会への「静かな反逆」の思想を持って履きこなすことで、この一足は決して流行遅れにはならない、あなただけの強固な個性に変わります。
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