小野雄大『体育会系』中央公論新社,2026年1月

5.0
冬栞 HuyuShioriのブックレビュー アーカイブ

はじめに

本日より、独立してアーカイブにてブックレビューを行うことにした。ホームページの独自性として書評をしていきたいと思ったからだ。ここで扱う書籍は実際に私が読んで面白いと思ったものだけである。さて、記念すべき第一回目の書籍が2026年1月に出版された小野雄大著『体育会系』である。以前、私は「禅とパワハラ」という記事を執筆した。

👇気になる方はリンクに飛んで、是非読んでいただきたい。

体育会と禅-驚くべき類似構造-
※本稿は、特定の団体や指導法を断定的に批判するものではなく、「禅」「日本の伝統的な指導スタイル」「現代の組織論」といったトピックに関する、筆者個人の経験と考察に基づいた見解、及び感想を述べるものです。はじめに 近年、「禅」や「マインドフルネ…

その後本書を知り、気になった。そこで早速購入してみた。では、下記からそのレビューを記していこう。

レビュー

本書は”日本特有の存在”である「体育会系」について、詳細なデータを用いて日本のスポーツの受容や学校教育の問題を取り上げている。スポーツを人間性教育に利用(アスレティシズムと呼ばれる)し始めたのは19世紀のイギリスである。それを日本が明治に取り入れ、軍事教練の一環として活かしていったことが日本のスポーツ受容(体育)の始まりである。その中で中心となっていたのは学校であった。戦争のための体力形成として教育に取り込んだのである。

本書では触れていなかったがこの「体育会系」の形成の一助となっているものに、禅宗が関わっているのではないかと私は考える。なぜなら、禅には「不立文字(ふりゅうもんじ)」という思想があり、言葉で説明するより、自分で経験して学ぶものだという指導法がある。これは、非常に厳しい物であり、何をしようが全て否定される。その中で悟りを目指すというものである。これは体育会系の”しごき”に類似してはいないだろうか。ということで私は体育会系という社会集団を宗教的意味合いの土壌の上で成り立ったものだと考える。もう一度言及しておくが、この「体育会系」形成の土台に「禅宗」が関わっているというのは私の主張であり、本書では述べられていない。

さて、本格的に本書のレビューをしていこう。

「体育会系」という誕生に強く関わっていたのが大学だという。私としては高校の部活動の野球部やサッカー部が「体育会系」のイメージであったので驚いた。歴史的には大学が主であるようだ。本書によると1960年代の大学の「全学共闘会議」に端を発するという。学生団体が左翼として社会運動をしている中で大学側に与していたのが大学の運動部であった。運動部が暴力的というイメージがつき始めたのがこの全共闘での暴力行為や大学内での暴力事件による死亡事例などが発生した頃にメディアが「暴力的」というレッテルを貼り報道したことが「体育会系」という言葉の誕生につながる。実際に著者はこの頃の記事を徹底的に調べ、「体育会系」という言葉の初出が大学闘争時、60年代であることを突き止めた。*1

「体育会系」が批判されるのは大学闘争時代の暴力事件や運動部内のいじめに端を発する死亡事件などが続出し、メディアが悪評を報道したからである。記憶に新しいのが2018年に起きた所謂、「日大アメフト部悪質タックル事件」である。

毎日動画 – 毎日新聞
アメリカンフットボールの名門、日大フェニックスの名が泣いている。関西の雄、関学大との定期戦(6日・東京)で守備選手が相手選手を危険な反則タックルで負傷に追い込んだ。関係者は「監督の指示」。スポーツの根幹を揺るがす悪質な行為に、関東学生連盟は…

このように「体育会系」で特出した特徴が部内での絶対的上下関係である。これも元々は戦争のための体力構築から始まったものだと考えると納得できる。

世間で「体育会系」と取り上げられる時、スポーツ推薦で大学に進学した。学力が伴っていない。特権がある。というイメージが付き纏う。それが影響してか「体育会系」の悪いイメージである暴力事件やわいせつ行為、薬物事件等々の不祥事につながるとも思われる。

ここからは私の所感であるのだが、これは何も「体育会系」に限った話ではない。閉鎖的環境と仲間意識が入り交じるとすぐ、こういった状況に至るのだ。ブラック企業などもその流れであろう。「内」と「外」で分類される時、どこであってもこの状態が起きうるということは身に刻んでおく必要があるだろう。仲間として「内」に入り込んだとき、人は自他の境界が曖昧になり、知ってか知らずかパワハラ的な行為をしてしまうのだろう。

とりあえずは本書のレビューはこれで終わりとしておく。この歴史的な背景が現代のキャリア形成にどう繋がるかは、ぜひ本書の後半を手に取って確かめてほしい。

こういう方へ

本書はこういうことに興味・気になるという方にオススメです。是非購入してくださいね!!オススメです!!

体育会系ってなんだろう?

何で、スポーツができるだけでそんなに評価されるの?

卒業後のキャリアってどうなるんだろう?

日本における体育会系の立ち位置を知りたい方

注釈

1.小野雄大 「第2章 体育会系の起源-対全共闘の大学運動部-」『体育会系』中央公論新社,2026年,p59

参考文献

小野雄大『体育会系』中央公論新社,2026年

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